【品質管理15年】温度計の校正・誤差管理はこうする 現場で使える月次チェックの仕組み化

食品衛生・品質管理の知恵袋

はじめに

食品工場や飲食店では、冷蔵庫・冷凍庫・保管庫など、あらゆる場所で温度計を使っています。
しかし、その温度計が「本当に正しい温度を示しているか」を定期的に確認している現場は、意外と多くはないのではないでしょうか。

温度計の誤差に気づかないまま管理を続けていると、実際には規格外の温度で保管していたにもかかわらず「記録上は問題なし」という状態になりかねません。
これは食品事故や自主回収の引き金にもなり得るリスクです。

この記事では、私が食品製造の品質管理担当として15年間実際に運用してきた「温度計の誤差管理」の仕組みを、具体的な手順とともに紹介します。

温度計管理の全体構成:標準温度計と現場温度計

温度計の管理は、大きく2つの階層に分けて考えます。

  • 標準温度計(基準機):社内のすべての温度計の”ものさし”となる温度計
  • 現場温度計:製品の温度測定や保管庫に取り付けて使う、日常的に使用する温度計

現場温度計が正しいかどうかを判断するには、その”ものさし”である標準温度計自体が正確でなければなりません。そのため、標準温度計は外部の校正機関に定期的に出し、精度を保証してもらう必要があります。

私の勤務先では、標準温度計を1台と予備を1台保有し、定期的に外部校正に出していました。
これは温度計だけの特別なルールではなく、糖度計や比重計など、社内で使用する検査機器全般に適用していた社内規定の一部です。

本来は毎年すべての検査機器を校正に出せるのが理想ですが、機器の数が多いと費用が大きくなるため、現実的には「ローテーション計画」を組み、年ごとに校正対象を割り振って、数年ですべての機器が一巡するように管理している現場も多いのではないかと思います。
頻度が高いほど精度の信頼性は上がるので、費用と相談しながら、できる範囲でローテーションの間隔を短くしていくのが理想です。

現場温度計の月次誤差チェックの具体的なやり方

標準温度計が正確であることを前提に、現場で使っている温度計との誤差を月に1回確認します。
この作業は現場のスタッフではなく、品質管理部門がすべての温度計を回収して実施していました。

手順

  1. 恒温水槽(温水槽)を用意し、水温を管理基準に合わせて設定する(私の場合はチルド飲料を扱っていたため、基準である10℃以下を守れているかを確認する目的で10℃に設定していました
  2. 標準温度計と、確認したいすべての現場温度計を同じ恒温水槽に入れる
  3. 温度が安定してから、標準温度計の示す値と各現場温度計の示す値を比較する
  4. 差(誤差)を記録する
  5. 誤差が±0.3℃以内であれば合格、これを超えていれば規格外と判断し、その温度計は交換する

この「毎月すべての温度計を回収してチェックする」という運用を続けることで、現場が気づかないうちに温度計が狂っている、という事態を防いでいました。

誤差(補正値)は温度計に見える形で表示する

ここで重要なのは、「±0.3℃以内だから合格」で終わらせないことです。
たとえば管理基準が「10℃以内」だったとして、誤差0.3℃の温度計が現場で「10℃ぴったり」を示していた場合、実際には基準を超えている可能性があります。
誤差自体は許容範囲内でも、境界値付近では現場が誤差を知らないまま「合格」と誤認してしまうリスクが残ります。

そこで私の勤務先では、月次チェックのたびに測定した誤差を「補正値」として、ラベルシールで温度計本体に直接貼り付けていました。
「+0.2℃」「−0.1℃」のように、その温度計固有の補正値が一目でわかるようにしておき、翌月チェックして数値が変わればラベルを貼り替えます。

こうすることで、現場のスタッフは表示された温度に補正値を加味した「実際の温度」を意識しながら管理でき、温度計本体だけを見れば正しい判断ができる状態を保てます。

恒温水槽がない場合:氷水での代用方法と注意点

飲食店など、恒温水槽のような専用設備を持たない現場もあると思います。
私自身、その後カフェの仕事に就いた際は恒温水槽がなかったため、氷水で代用していました。

氷水を使う場合、注意すべき点が2つあります。

  • すぐに測らない:氷を入れた直後は水温がまだ安定していません。
    しっかり時間を置いてから測定することが重要です
  • しっかり混ぜる:かき混ぜが不十分だと、水温にムラができてしまい、正確に0℃に近づきません。氷水全体を均一な温度にするイメージでよく混ぜてから測定してください

恒温水槽ほどの精度は出しにくいですが、コストをかけずに誤差の目安をつかむ方法として、小規模店舗でも取り入れやすい方法です。

まとめ:規模に合わせた温度計管理のポイント

温度計の誤差管理は、次の3つの階層で考えるとわかりやすくなります。

階層内容頻度
標準温度計の外部校正校正機関に依頼し精度を保証定期的に実施(他の検査機器と合わせたローテーション計画、頻度は高いほど望ましい)
現場温度計の誤差チェック標準温度計との比較(恒温水槽 or 氷水)月1回
交換基準誤差が許容差(例:±0.3℃)を超えたら交換都度

設備が整っていない小規模な現場でも、「標準となる温度計を1台決めて、月1回氷水で他の温度計と比較する」というだけでも、温度計の狂いに気づける仕組みになります。ぜひ自店・自社の管理体制と照らし合わせてみてください。

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