【品質管理15年】小規模店舗のHACCP導入ガイド|何から始める?やさしい考え方を解説

食品衛生・品質管理の知恵袋

この記事は、飲食店・小規模店舗でHACCPをこれから始めたい方に向けた、最初の一歩の解説です。

前回の自己紹介記事では、私が理系出身ではないところから、どうやって15年も品質管理の仕事をしてきたかをお話ししました。

さて、今日の本題は「HACCP(ハサップ)」です。

飲食店や食品を扱うお店の皆さんは、一度は耳にしたことがあるはず。でも正直なところ…… 「言葉が難しくて、何から手をつけていいかさっぱり!」 と思っていませんか?

安心してください。専門家のような難しい理屈は抜きにして、15年の現場経験から辿り着いた            「やさしいHACCPの考え方」を解説します!


1. HACCPは「後から取り返しがつかないこと」を守るルール

HACCPを難しく考える必要はありません。 私が現場で伝えている考え方は、たった一つ。

「後の工程でカバーできない(担保できない)ものを、重点的に管理する」

これだけです。

例えば、こんな場面を想像してみてください。

  • 加熱する料理: もし食材に少し菌がついていても、しっかり加熱すれば死滅させることができます。
  • 加熱しない料理(サラダなど): 盛り付ける人の手が汚れていたら、そのままお客様の口に入ってしまいます。後から菌をやっつけるチャンスがありません!

このように、**「ここで失敗したら、もう安全を保証できない」**というポイントを見極めるのがHACCPの第一歩です。


2. まずは「3つのグループ」に分けてみよう

小規模な店舗なら、メニューを以下の3つのグループに分けるだけで、管理がグッと楽になります。

第1グループ:冷蔵品をそのまま出す(非加熱品)

  • 例: お刺身、生野菜サラダ、サンドイッチ
  • ポイント: 「食材を汚さない」「菌を増やさない(すぐ出す)」

第2グループ:加熱してすぐ出す(加熱品)

  • 例: ステーキ、焼き魚、揚げ物
  • ポイント: 「中心までしっかり火を通す」

第3グループ:加熱して冷却・再加熱する

  • 例: カレー、スープ、煮物
  • ポイント: 「冷ます時間を短くする(菌が元気な温度帯を早く抜ける)」

まずは自分のお店のメニューがどれに当たるか、書き出してみることから始めてみましょう。


3. 「理屈」より「HACCPの記録(温度・手洗い・加熱チェック)」が店を守る

「理系じゃないから、難しい分析なんてできない!」 そう思っていた過去の私に教えてあげたいのは、**「一番大切なのは、日々のチェックと記録だ」**ということです。

  • 冷蔵庫の温度は適正か?
  • スタッフは正しいタイミングで手を洗っているか?
  • 中心までしっかり焼けているか?

これを「やったつもり」にするのではなく、毎日1枚のシートにチェックを入れる。この積み重ねこそが、万が一何か起きたときに**「うちはこれだけしっかりやっていました」という、お店を守る最大の証拠**になります。


4. 完璧を目指さない。まずは「一行」から

飲食料品メーカーのような巨大な工場の基準を、そのままカフェや個人店に持ってくるのは無理があります。

私が飲食店(カフェチェーン)の巡回で感じたのは、「立派なマニュアルよりも、現場で守れるのは簡単なルール」です。
お店で働くのは店長や社員だけではなく、パート・アルバイト、中には飲食の仕事が初めてという新人もいます。

「HACCPを導入しなきゃ!」と意気込んで分厚いファイルを作る前に、まずは「冷蔵庫の温度を毎朝/閉店後チェックする」という簡単なことから始めてみませんか?


「色々言われたけど、結局まずは何が必要なの?」と迷ったら、まずは**『温度計』と『信頼できる除菌剤』**の2点を揃えてください。

これだけで、HACCPの考え方の8割は実践できていると言っても過言ではありません。まずは形から入る。それが結果として、一番早く「安心な店」を作る近道になります。

👉 [HACCP最初の一歩!おすすめ衛生用品まとめ]


飲食店で使うなら丸洗い可能な防水タイプがおススメ。
中心温度を測定して、安全でおいしい料理を提供しましょう。
特に、ハンバーグなどの「ひき肉」を使用した商品は、中までしっかり火を通すことが重要です。

「ステーキはレアでもいいのに、どうしてハンバーグはダメなの?」 その答えは、ひき肉ができる工程にあります。ミンチにするとき、表面にいた菌が**「お肉の真ん中」**まで混ぜ込まれてしまうんです。 つまり、ハンバーグの中心部は「生」ではいけません。見えない菌を退治するには、中心温度が 75°C になっていることを確認するのが、唯一の安心への近道です。

 

非加熱のサラダやサンドイッチは、提供する直前の「除菌」が最後の砦です。


 調理の前に、手指を消毒しましょう。

「アルコールを過信していませんか?」
多くの現場で使われているアルコールですが、実は万能ではありません。
飲食店で最も怖い「ノロウイルス」や、カレーなどの煮物で発生しやすい「ウエルシュ菌」には、アルコールが効きにくい場合があります。


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だからこそ、

  1. 菌を物理的に洗い流す「正しい手洗い」
  2. アルコールでは防げない菌にも対応できる「次亜塩素酸水」の併用
  3. 加熱することで菌を死滅させる「 75℃で1分以上の加熱

この3つの組み合わせが、プロの現場では「絶対のルール」になっています。


まとめ:HACCPは「安心」をカタチにするもの

HACCPは、決してお店を苦しめるためのルールではありません。 お客様に「安心」を提供し、スタッフが自信を持って料理を出せるようにするための、いわば**「お守り」**のようなものです。

次回からは、このHACCPを実践する上で欠かせない、より具体的なテーマ(検便、手洗い、防虫対策など)について深く掘り下げていきます。

プロの厳しい基準を、お店にちょうどいいサイズに噛み砕いてお伝えしますので、ぜひ楽しみにしていてくださいね!


次回のテーマは:「もし検便で陽性が出たら?現場がパニックにならないための『初動対応』と『復帰のルール』」をお届けします。

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