【品質管理15年】異物混入クレームの一次判定|虫・毛髪・樹脂・紙を見分ける手順(顕微鏡・磁石・FTIR)

食品衛生・品質管理の知恵袋

この記事でわかること

  • 異物混入クレームで、最初にやるべき「一次判定」の型
  • 虫・毛髪・紙・樹脂片・植物片など“分類しにくい異物”の見分け方
  • 工場や現場で「入り得るか?」を切り分ける考え方
  • 断定せずに誠実にまとめる報告書の書き方(骨子)

※本記事は一般的な考え方としてまとめています。実際の判断は各社の基準・設備・手順に従ってください。


はじめに:異物混入は「分類しにくい」のが普通

異物混入は、虫・毛髪・紙・樹脂片など、見た目だけで断定できないものが多くあります。
さらに、FTIR等の分析を行っても、素材が「PPっぽい」「PEっぽい」など **“断定しきれない”**ケースもあります。

だからこそ、最初に必要なのは「一発で当てる」ことではなく、
一次判定の型で、可能性を絞ることです。


0. 大前提:現物は捨てない・洗わない・壊さない

異物も製品も、事象が終わるまでは保管します。
写真(全体・拡大・スケール付き・ロット表示)を残してから、必要な確認へ進みます。

(※初動の手順は別記事で詳しく)


1. 一次判定の流れ(この順で進める)

ステップ1:観察(見た目・状態)

  • 形状(繊維状/粒/板状/虫体など)
  • 色(透明、白、黒、茶色)
  • 濡れ・乾燥、油っぽさ、におい
  • 付着している位置(製品内/容器内壁/口部など)

ステップ2:サイズ測定(スケール付き写真)

異物は、物差し(スケール)と一緒に撮影し、長さ・太さの目安を残します。


ステップ3:触感(安全な範囲で)

硬い/柔らかい/もろい/繊維っぽい、などの情報は切り分けに役立ちます。

ステップ4:磁性確認(磁石)

金属が疑われる場合は、磁石への付着で大きく絞れます。

ステップ5:顕微鏡(拡大観察)

毛髪・虫・植物片・樹脂片などは、拡大で見える情報が増えます。
必要なら顕微鏡画像を残します。

ステップ6:類似物照合(現場・工場に「同じものがあるか」)

紙・ビニール・シリコン片・樹脂片など「工場や現場にありそう」なものは、
**類似物(候補)**がないかを確認し、比較写真を残します。


2. 異物の“ざっくり分類”早見表(一次判定用)

見た目の例まず疑う分類次にやること
硬い・キラキラ金属片磁石/設備由来の可能性確認
繊維状で細い毛髪・繊維顕微鏡(キューティクル等)
羽・脚が見える虫種特定/捕獲状況確認
板状・透明/白樹脂片(PP/PE等)顕微鏡/類似部材照合
もろい・紙っぽい紙・植物片顕微鏡/類似物照合
黒点・ヌメりカビ様微生物疑いとして扱う

3. 毛髪が疑われるとき:キューティクル観察(例)

毛髪と思われる異物の場合、顕微鏡で表面構造(キューティクル等)を観察し、
毛髪の可能性を評価します。

報告書に入れやすい骨子(例)

  • 異物の観察結果(形状・長さ・太さ・色)
  • 顕微鏡所見(毛髪様の特徴が認められる/認められない)
  • 工程上の混入可能性の評価
    • インライン製造であること
    • 工程内にフィルター等があり排除可能であること
    • 製造場入場時の持ち込み防止(専用衣服、エアシャワー、粘着ローラー等)を実施していること
  • 再発防止(例:入場時の持ち込み防止について改めて注意喚起/必要に応じて強化)

ポイント:工場起因を断定せず、「現時点で確認できる事実」と「可能性の評価」を分けて書くと誠実です。


4. 虫が疑われるとき:工場では“虫種”と“捕獲状況”が鍵

虫のクレームは、まず **虫の種類(虫種)**で混入可能性の見立てが変わります。
工場の場合は、防虫業者や工場内の捕虫データが判断材料になります。

工場で確認するポイント

  • 虫種(何の虫か)
  • 工場内で捕獲されているか(捕虫器トラップ等)
  • 重要区域(清浄区域)で捕獲がないか
    • 製品に入る可能性がある区域で捕獲がある場合、対応の重みが変わる

虫は「入り得ない」と言い切らず、虫種・捕獲状況・工程(清浄区域の管理)をセットで見て判断します。

4-2. カタラーゼ反応は「混入タイミング推定のヒント」になる

虫が見つかった場合、「いつ混入した可能性が高いか(工程内か、開封後か)」を考える必要があります。
そのヒントの一つが カタラーゼ反応(過酸化水素で泡が出る反応)です。

目安(断定しない)

  • 泡が出る:十分な加熱を受けていない可能性 → 殺菌後・開封後に混入した可能性も考えられる
  • 泡が出ない:加熱で反応が失活している可能性 → 殺菌工程前に混入した可能性も考えられる

ただし、虫種や加熱条件によって反応が残る/残らないが変わるため、これだけで断定はしません。(cir.nii.ac.jp)
虫種・状態(生/死、破損)、工程(殺菌工程の有無)、工場内の捕獲状況(清浄区域での捕獲の有無)などと合わせて総合判断します。


5. FTIRなどでも断定できない異物がある

樹脂片や植物片などは、分析しても
「PP/PEの可能性」「植物由来の可能性」など、断定しにくいことがあります。

この場合は、

  • 形状・付着物・におい・混入位置
  • 類似物照合(工場・現場で同素材が使われていないか)
  • 日報・設備交換履歴(交換した部材がないか)
    など “周辺情報”で可能性を絞るのが現実的です。

もしも、製造場内に類似物がある場合には、その「類似物」と「異物」を比較検査してもらう事をおすすめします。
異物の特定には至らなくても、製造場内にある類似物を洗い出してみたけど、どれとも一致しなかったという事が答えになるからです。


6. まとめ:異物混入は「当てる」より「絞る」

  • 異物は多様で、断定できないケースも普通にある
  • 一次判定の型(観察→測定→磁石→顕微鏡→照合)で可能性を絞る
  • 毛髪・虫は、顕微鏡所見や捕獲状況など“根拠”を残して誠実にまとめる
  • 「ゼロ」と断定せず、可能性評価+再発防止で信頼を作る

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