飲食店や食品の現場で、最も「やってはいけない」けれど、最も「起こりやすい」ミス。 それが、**「アレルギー・期限表示のミス」や「期限切れ食材の使用」**です。
「気をつけていたのに、うっかり見落とした」 「ダブルチェックをしたはずなのに、漏れてしまった」
こうしたヒューマンエラーは、根性論では防げません。15年の品質管理の現場で私が学んだのは、**「誰がやってもミスが起きない仕組み」**をいかに作るか、ということでした。
今回は、お客様の命とお店の信頼を支える「表示と期限管理」の鉄則をお話しします。
1. アレルギー表示は「命」に直結する100点満点の仕事
表示管理の中で、最も緊張感を持って取り組まなければならないのがアレルギー表示です。
アレルギーをお持ちのお客様にとって、表示ミスは「うっかり」では済まされません。誤って摂取すれば、アナフィラキシーショックを引き起こし、最悪の場合は命を落とす危険があるからです。
- 情報の「川上」を疑う: 「いつも使っているから大丈夫」という思い込みが一番危険です。メーカー側で原材料が変更になる(サイレントチェンジ)こともあるため、納品された現物のラベルを毎回確認する習慣が必要です。
- 転記ミスの防止: 原材料情報をメニュー表やプライスカードに書き写す際は、必ず二人以上で原本と突き合わせる「読み合わせ」を徹底しましょう。
2. 期限管理とダブルチェックを「形骸化」させない工夫
「二人で確認しました」と言いながら、実際には前の人の判断を鵜呑みにしてハンコを押すだけ……。そんな「形骸化したダブルチェック」を防ぐには、作業を見える化することが重要です。
- 具体的な数値を書く: チェックリストには「レ点」ではなく、確認した「具体的な日付」を記入させるようにします。
- 期限の見える化: 大きな文字で「開封日」と「使用期限」を書いたラベルを貼るなど、パッと見て誰でも異常に気づける状態を作ります。
3. 食材だけじゃない!「資材の外装」が招く二次汚染
管理すべきなのは中身だけではありません。**「食材を包んでいる容器や、検査に使う道具の清潔さ」**も同様です。
過去に、検査で使用する滅菌済みのシャーレが届いた際、段ボールに鳥の糞が付着していたことがありました。屋外倉庫で保管されていたことが原因でしたが、これは重大な汚染リスクです。
- 外側の汚れは中まで運ばれる: 汚れた外装を触った手でそのまま中身を扱えば、汚染は一気に広がります。
- 誠実な業者選定: 改善を求めても対応してくれない業者は、思い切って変更することも必要です。「清潔に扱うべきものを、不衛生な空間に置く」という感覚のままでは、一緒に安全を守ることはできないからです。
4. 煩雑なルールは「簡略化」して守り抜く
工場の厳しい基準をそのまま店舗に持ち込むと、現場がパンクして結局形骸化してしまいます。
大切なのは、「これだけは絶対に守る」という項目に絞り、作業を極限までシンプルにすることです。過剰な確認を整理し、最低限必要なチェックポイントを検証(エビデンス確保)した上で運用する。この「守れる仕組み作り」こそが、現場を救います。
例えば、「開封日」と「使用期限」を大きく書く。とか、「期限日」に赤で○する。など。簡単な事ですが、そのひと手間をやることで、確認するという事に気付けるようになったりします。 可能であれば、ラベラーなどで「開封日」を入力すると自動的に「使用期限」が記載されたラベルが発行されるようにできれば、確認がしやすくなります。
まとめ:仕組みが「人」と「お店」を助ける
表示ミスや期限切れは、悪意がなくても起きてしまうものです。だからこそ、**「ミスをした人を責める」のではなく「ミスが起きる仕組みを改善する」**という視点を持ってください。
アレルギーをお持ちのお客様は、お店の表示を信じて食事をされます。その信頼に「仕組み」で応えることが、プロの品質管理です。
次回のテーマは:「起きてからでは遅い。異物混入や食中毒疑い時の『初動30分』マニュアル」をお届けします。
