この記事でわかること
- 微生物疑い(カビ・とろみ・異臭)の初動
- 「客先要因に見える」状態から、工程内の原因へ辿る考え方
- 工程を輪切りにして原因を潰し込む(切り分け)手順
- 異常が拡大したときのリスク(回収・信用・事業への影響)
はじめに:微生物系は“あとから大きくなる”ことがある
微生物が疑われるクレームは、最初は
「開封後に放置したのでは?」など客先要因に見えることがあります。
でも、同様の申し出が続く/社内の検査でも出る/頻度が増える…となると、
工程内のどこかに“溜まり場(盲点)”がある可能性が上がります。
0. 最優先:現物は冷蔵保管、検査は早めに
微生物系は時間で状態が変わります。
現物確認後は原則 冷蔵保管。微生物が疑われる場合は、可能な範囲で 受領直後に検査を優先します。
1. 微生物疑いとして扱う典型パターン
- カビがある/黒点がある/浮遊物がある
- とろみがある/糸を引く/粘る
- 異臭がする(カビ臭、酸っぱい臭い、腐敗臭など)
- 容器が張っている(形態による)
2. 工場起因を疑う「3つのサイン」
サイン①:同様の申し出が複数回続く
サイン②:社内の検査でも“たまに”出始める
サイン③:時間とともに発生頻度が増える(汚染が“成長”している)
3つが揃うほど「偶発」ではなく、工程内の“盲点”を疑う優先度が上がります。
3. 原因探索の考え方:工程を“輪切り”にして境界を探す
原因を探すときは、「一気に当てにいく」より、
どこまでは問題なくて、どこから問題が出るのかを見つける方が現実的です。
イメージとしては、工程を輪切りにして、段階ごとに「ここはOK」「ここが怪しい」を積み上げていきます。
例:輪切り(切り分け)の進め方(一般化)
- 原料・受入 → 調合 → 殺菌 → 充填 → 包装 → 保管・出荷
のように工程を区切り、記録と検査結果を照らし合わせます。 - 製造当日の保存品がOKなのか
- 工程検査で兆候があるのか
- **特定のライン・特定の時間帯(出だし/終わり)に偏っていないか
- 同じロット/同じ原料に偏っていないか
「出だし」に偏ることがある(理由:停止中の吸い込み)
微生物系の異常は、理屈上はどのタイミングでも起こり得ます(例:カビの胞子は入る時は入る)。
ただし、原因によっては 「出だし」に偏ることがあります。
例えば配管の亀裂などで、製造が止まっている間に“吸い込み”が起きている場合、
次の製造開始直後(出だし)で影響が出やすいです。
製品が流れ始めると配管内の圧力が大きくなり、吸い込みは起こりにくくなるため、
結果として 出だしの製品で異常が出やすいという見え方になります。
この「境界」を探す作業が、原因特定への近道です。
4. 現場で実際にやること:拭き取り検査で“溜まり場”を探す
工程内に盲点が疑われるとき、
**拭き取り検査(環境/設備の汚れ確認)**で怪しい箇所を探すことがあります。
- 洗浄で届きにくい死角
- 分解しないと見えない部位
- 湿りやすい場所、結露が出やすい場所
- 外から見えない配管や二重構造
「ここが怪しい」と仮説を立てて、拭き取りで確認しながら絞っていく。
その結果、次の“盲点パターン”に繋がります。
5. 工程内の“盲点”になりやすいパターン(一般化)
パターンA:自動洗浄(CIP)でも届かない“死角”
自動洗浄を前提にしていても、構造上、洗浄液が届きにくい箇所が存在することがあります。
そこに汚れや微生物が蓄積すると、ある時点から影響が表面化します。
パターンB:外から見えない配管・二重構造の異常
結露対策などの二重構造は、内側の異常(亀裂など)が外から見えにくく、
停止中の吸い込み→次の製造開始時(出だし)で影響、というパターンが起こり得ます。
共通点は「前提として疑いにくい場所」「外から見えない場所」が盲点になること。
6. なぜ“調査”が重要か:放置すると企業に大ダメージになり得る
微生物系の異常は、放置したり見逃したりすると、
製品回収・営業停止・信用毀損など、企業に大きなダメージを与える可能性があります。
最悪の場合、食中毒の発生につながったり、
取引停止や売上の大幅減少など、事業継続リスクになることもあります。
だからこそ、
「ゼロは言い切れない」前提で、
異常が出たら、工程を輪切りにして原因を潰し込むことが大切です。
まとめ
- 微生物疑いは「カビ・とろみ・異臭」
- 3つのサイン(続く/社内でも出る/頻度増)が出たら工程内の盲点を疑う
- 原因探索は「工程を輪切り」にして境界を探す
- 拭き取り検査で“溜まり場”を探し、死角や配管の盲点に辿る
- 放置は回収・信用毀損につながり得る。だから調査が重要
